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「名前は大久保一成(おおくぼ かずなり)って読みます。
2人が住んでいたアパートで姉が亡くなったので……、上が2人が住んでいたアパートの住所で、下が今現在大久保さんが住んでるアパートの住所です」
中学生にしては綺麗な文字だ。話し方も子供にしてはキチンとしてるし、大切に育てられたのがよくわかる。
「今も彼と交流あるんですか?」
「はい、私は。……両親は姉と絶縁状態だったので、もちろん大久保さんにも一度も会ったことはありません。姉の自殺も大久保さんのせいだって言ってますからね……」
葵を有名私立中学に通わせる親だ。姉もきっと箱入り娘だったんだろう。それが高校卒業と同時にどこの馬の骨ともわからない男と同棲し始めたのだから、失望や怒りでいっぱいだったろう。絶縁状態なのも頷ける。
「彼と連絡取れますか?」
「はい。でも……私、実は姉が出したこの依頼の答え知ってるんです」
「あ?」
思わず素が出てしまう山田。
「ご、ごめんなさいっ!
まさか姉があんなことで悩んでると思わなかったから……。
私、大久保さんに相談されてたんです。姉にプロポーズしたいんだけど、婚約指輪はいくらの値段の物が喜ばれるのかって……。
私が金額言ったら驚いちゃって……、それで昼の仕事とは別に夜アルバイトしてたみたいで、姉を驚かしたいから内緒ねって……」
(いくらって言ったんだ、このお嬢様は……)
「だから、この毎夜行方知れずもアルバイトしてたからだし、無視をするも、嘘が苦手な大久保さんは敢えて何も言わなかったんじゃないかなって……」
「なるほどね……」
もしかして働かずして依頼料をもらえるのか? これは日頃佐伯にこき使われている俺への神様からのご褒美的な依頼だったのか? お金入ったらどうする? どうしちゃう!? まず滞納分の家賃払って、滞納分の光熱費払って、ここのツケ払って、……って払ってばっかりかッ!!
僅か0.5秒の間にいろいろ考えてしまった山田だが、現実はそう甘くはないようだ。
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