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「なので依頼内容を変えたいんです。
私には幽霊は見えないけど、姉は大久保さんを誤解したまま自殺したことになるんですよ。きっとまだ成仏だってしてないだろうし、姉の霊を見つけて誤解を解いてくれませんか?」
「……」
めんどくさい、今回2度目の感想だった。かと言って依頼内容が変更されたくらいでキャンセルできるほど佐伯事務所は繁盛しちゃいない。
「大丈夫です、やります」
若干キレ気味な山田に、葵は嬉しそうに微笑んだ。満面の笑みを浮かべたその顔は、まだやっぱり幼い。胸はもっと幼い。
「よかった! できるだけ私も同行しますから」
「あ、はい。じゃあ葵さん、今日はこの辺で……」
山田が依頼者やメモを鞄にしまう。すると、葵が急に押し黙った。
「……? 葵さん?」
「あの……、言いづらいんですけど……葵って亡くなった姉の名前で……」
考えてみればそうだ。生前の姉が依頼してきたのだから。
「え……と、じゃあ……?」
「私、浅倉小真理(あさくら こまり)って言います。後、年上の人から敬語使われるの苦手なので、普通に話してもらえませんか?」
敬語が苦手な山田には願ってもない要望だ。
「わかった。じゃあ小真理、次の予定が決まったら携帯に連絡入れるから」
「呼び捨ては止めてください」
「はい、ごめんなさい」
調子に乗った山田は、葵改め小真理に怒られたのだった。
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