第一章【前編】

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「……な、なんだよ」  不気味な笑みを浮かべる佐伯に、青年は顔をひきつらせた。 「受けてくれますよね? この依頼」 「はぁー? まさか今時食べ物でつるつもりなのか?」  反抗的な態度の青年に気分を害するわけでもなく、佐伯は莉緒の方を向いて手を出した。無言で渡される一枚のレシート。 「では今すぐ、きっちりきっかり払ってもらえますか? 食事の代金」  依頼書の上に置かれたレシート。  銀のス○ーン……○○個、○円。 「……おごりじゃないの?」  無言で頷(うなず)く満面の笑みの佐伯。  ポケットから財布を取り出しテーブルの上でひっくり返すと、コンコンと音を立てて小銭が数個テーブルの上に転がる。  全部で598円。 「……ツケにしてくれない?」  無言で首を横に振る佐伯。 「……りぃ、お金貸し」  青年が言い終わる前に、すごい勢いで首を横に振る莉緒。首が折れそう。 「受けてくれますよね? この依頼」  変わらない笑みを浮かべる佐伯。  青年は観念した。 .
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