10人が本棚に入れています
本棚に追加
凍りついたように固まる葵。
そんな葵に山田は苦笑い。この質問、事務所を訪れる人間はまずしない。訪れた時点で存在を認めているから。説明下手な山田は百聞は一見にしかずと正体を見せたが、これは失敗だっただろうか。
ウェイターが料理と飲み物を運んできた。山田が【マスターオススメスペシャルAランチ】を食べ終え、葵の前に置かれたコーラが水滴を纏った頃、やっと葵が正気に戻った。
「あの……、信じました。初めて見たからびっくりしたけど……、あはっ」
幾分まだ動揺はあるものの、ぎこちない笑顔を山田に見せた。
「ちなみに猫アレルギーじゃないよね?」
「え、あ、はい。猫飼ってるし……」
「そうなの? オス? メス!?」
「……そこ重要ですか?」
「俺的には重要! ……なんだけど、猫アレルギーじゃないことの方が重要でした。
じゃあ改めて……、この依頼を担当する山田です。依頼が解決するまでの間、よろしくお願いします」
手を差し出すと、そっと葵が握り返してきた。
不審者を見るような目だったけれど。
.
最初のコメントを投稿しよう!