†記憶

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玄関の前にさしかかった時、部屋から話し声がきこえた。 悠「だから、いってるだろ! あんたと一緒に住む気はないって。」 ?「…。」 悠「母さんを、見捨てた様なやつなんかと… 出ていけ!出ていけよ!」 ?「また来るよ。」 私は急いで外にに行こうとしたが、間に合わなかった。 悠「聞いた?」 冬子「ごめんなさい。 盗み聞きするつもりはなかったの。」 悠「いいんだ。 話、聞いてくれる?」 冬子「私でいいの?」 悠「君になら話せそうな気がするよ。 まぁ、中にはいって。」 彼は彼の家族について、話してくれた。 彼の父は大手企業の社長さんで、多忙な毎日を送っていた。 ある日、母親が事故にあったそうだ。 彼の母はすぐに病院に運びこまれ、なんとか一命をとりとめたそうだ。 しかし、彼の父は仕事を理由にお見舞いには一切来なかったそうだった。 しばらくして、母親は容態が急変したそうだ。 子供だった彼だけが母親の病室で、容態が安定する事を祈っていた。 しかし、祈りは通じず母親は他界してしまった。 父が病室に来たのは、彼の母がなくなってからだったそうだ。 悠「あいつが、母さんの病院に来て母さんを励ましてあげればっていう考えをしていたんだ。僕もまだ子供だったからね。」 と彼は寂しそうに笑った。 悠「でも、許せないのは… 母さんが苦しんでいるに、アイツは一度も病院に来なかったことなんだ。」 冬子「…。」 私は、なんと答えたらいいのかわからなかった。 でも、(死)という言葉に私自身覚えがある気がした。 悠「アイツは、仕事を優先して、邪魔な僕と母さんをここに追い出したんだ。」 冬子「…そうなんだ。」 私は曖昧に返事をしていた。 悠「僕の話しは、これでお終い。 お腹空いちゃった。 さぁ、ご飯にしよう。」 私は、本当に父親がそんなことをするのかと疑問におもった。 が、口にはしなかった。 夕食後、悠は学校で会ったことをとても楽しそうに話してくれた。 彼が友達とバカやった事、クラスでの出来事について。 冬子「そういえば、悠って、今何歳なの?」 悠「16だよ。 冬子さんは?」 冬子「私は17だよ。」 悠「やっぱり。 年上な感じがしたよ。」 冬子「そう?」 などと夜遅くまで会話が続いた。
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