私の知らない彼

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橋本「実は初戦、藤沢は9連続奪三振を相手チームに食らわしたんだが……あれもキャプテンのリードを何度か無視してな。まぁ、あの日の藤沢は絶好調だったから良かったんだが……次は…な……」 !? その監督さんの口ぶりだと、どうも力の調子はいいとは思えない。 愛「あ……彼……調子悪いんですか?」 橋本「いや、悪いわけじゃないんだが……ただ、キャプテンに言わせれば球半個分ズレてると言っててな……。」 愛「半個分……?」 橋本「あぁ、半個分くらいどうってことないと思うかもしれんが、コレが命取りでな。甘いコースに入るといくらでもバッターにもっていかれるんだ……これが……」 そういえば、お兄ちゃんもそんなようなことを昔言ってた。 お兄ちゃんがピッチャーをやっていた頃、家でピッチング練習で的当てをしていた時のことだ。 ど真ん中より少し離れているとはいえ、殆ど真ん中に当たっていたのを見て私は凄いと思っていた。 でも、お兄ちゃんにしてみれば、 『こんな球……使えねーんだよっ』 ってイラついていたっけ…… 愛「そうかもしれないですね。ちょっとのズレが向こうにとったら好都合の球に変わることだってあるようですから…」 …っていうか……、力……あの時のお兄ちゃんと同じ調子なの!? 私は彼が心配でならなくなった。
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