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僕は声を出さずに小さく笑う。
「今はまだ解らなくてもいいよ。ただ、君の味方ってことだけは知っておいてほしい」
僕は敢(あ)えて父親であることを伏せた。記憶に残らないほど昔に別れたわけじゃないので、『知らない』ということは余程、消したい存在だったのか、それとも『現在』から自分を守る為に、余計な記憶を排除したのだろうか。
どちらにしろ、僕の正体はいずれ解ることだ。だから僕は直接的ではないにしろ、核心に触れる。
「遅くなってごめん。迎えにきたよ」
約束を、そして君を守りにきた。だから、どうかこの手を取って。
少女は無表情のまま、差し出された手をそっと握った。
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