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陽射しの強い季節。
まばらに浮かんだちいさな雲が時々太陽を隠しながら流れていく。
今日は風が強いのか、少し早いように見える。
ポツ、ポツと申し訳程度の雨が降ってきた。
よく肥やされた畑に、家畜として飼育されている乳牛、小屋の隣に積み上げられているわら束。
そんな、どこかの牧場のような田舎独特の匂いと雨の匂いが混ざり合う。
僕の生まれた場所。
町というよりも、村といった方がまだしっくり来るくらいドのつく田舎。
都会に比べれば不便なこともあるが、やっぱり生まれ育った故郷の空気に勝るものはないと、改めて思う。
そんなおり、
「ほんっと、田舎だなここ。コンビニもスーパーもどこにもねぇし……大丈夫と思って傘置いてきちまったし」
そう文句を言いながら、んっ、と軽く背伸びをした後、首を鳴らしているのは友人の茂(しげる)。
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