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天音がスカートの後ろに手を回すと、太股に沿って手を滑らせて、ゆっくりしゃがみ込んだ。
そのまま、膝に手を乗せる。
「辛くて、元気出なくて、苦しくて。吐いちゃったりもしちゃった。
でもね。しげ君が、ずっと励ましてくれた」
天音の後ろに立っている茂の表情が、少し曇った。
たぶん、その時の天音を思い出したんだろう。
「しげ君だって、辛かったはずなのに。でも、そのおかげでがんばれたんだ。
しげ君がいなかったら、私、どうなってたかわからない」
そうか。
茂には、感謝しなきゃな。
その当の本人は、照れくさそうに頬をかいている。
そういうところも、相変わらずだな。
「……あれから、もうすぐ二年経つんだよ」
ああ、もうそんなになるのか。
ここにいると、時間の感覚が麻痺するからな。
「…………ごめんね、はじめ君」
声が少しだけかすんでいる。
天音の瞳が、潤み始めていた。
どうやら泣き虫は治ってないみたいだ。
本人は強がっていたけど、天気雨みたいに、優しく微笑みながら涙を零すことが多かった。
それに、謝りたいのは僕の方なんだ。
あれは。
あの時起きたことは、ただの不幸な事故なんだから――。
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