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先に動いたのは素子だった
「もうすぐ夏休みだな」
ムサシは頷いた
「予定はあるか?」
今度は首を横に振る
素子は少し考えてから、口を開いた
「もし良かったら、絵を描いてくれないか?」
ムサシは首を傾げた
「私の学校にな、大きい真っ白な敷地があるんだ。そこにでっかい絵を描いてみないか?もちろん、無理強いはしないが…」
ムサシは顔をパァッと輝かせた
「それ、面白そうだね」
「そうか。じゃあ夏休みになったら来てくれ。道具はこちらで用意する。場所は分かるか?」
「大丈夫だよ」
素子からもようやく笑顔が溢れた
「私も楽しみになってきた」
それから二人はどんな絵を描こうか話し合った
それは時が経つのを忘れるほどで、気付いた時にはすっかり辺りは暗くなってきてしまった
素子とムサシはその場で別れた
帰り道、いつもの厳しい素子の顔はすっかり緩みっぱなしだった
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