6/6
前へ
/26ページ
次へ
「そうか…。しかしこんな絵を描くのは大変じゃないか?」 「大丈夫。頑張るから」   「私も出来る限り手伝うから何でも言ってくれ」 ムサシは笑顔で頭を下げた 素子も何故かそれにつられて頭を下げる それからの数日間、素子は夏休みが待ち遠しくて仕方がなかった   暇があってはカレンダーと睨み合いをしていた     「あれ?素子さんの家、塗り替えでもするの?」   部活中においては、ペンキ塗りに関する雑誌に目を通していた   「いや、そういうわけでは…」 「ふ~ん…まぁ楽しそうだから邪魔はしないけどさ」 「助かる」 「礼を言うほどのことじゃないでしょ。好き勝手出来るのがウチのいいとこなんだから」   素子は顔を上げ、部室を見渡した   大山と上田はゲームを、溝口は読書、渡邉に至っては存在が確認出来ない   「あぁ、本当にやりたい放題だな」 素子から笑みがこぼれる   素子自身、最近笑うことが増えてきたのが分かっていた 作り笑いですら出来なかった自分に驚きつつも、まんざらでは無かった   家に帰った素子は鏡の前で笑ってみた   しかしその顔はとてもぎこちなく、滑稽なものだった   それを見た素子は声を出して笑う その笑顔こそ本物の笑顔だった
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

123人が本棚に入れています
本棚に追加