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「そうか…。しかしこんな絵を描くのは大変じゃないか?」
「大丈夫。頑張るから」
「私も出来る限り手伝うから何でも言ってくれ」
ムサシは笑顔で頭を下げた
素子も何故かそれにつられて頭を下げる
それからの数日間、素子は夏休みが待ち遠しくて仕方がなかった
暇があってはカレンダーと睨み合いをしていた
「あれ?素子さんの家、塗り替えでもするの?」
部活中においては、ペンキ塗りに関する雑誌に目を通していた
「いや、そういうわけでは…」
「ふ~ん…まぁ楽しそうだから邪魔はしないけどさ」
「助かる」
「礼を言うほどのことじゃないでしょ。好き勝手出来るのがウチのいいとこなんだから」
素子は顔を上げ、部室を見渡した
大山と上田はゲームを、溝口は読書、渡邉に至っては存在が確認出来ない
「あぁ、本当にやりたい放題だな」
素子から笑みがこぼれる
素子自身、最近笑うことが増えてきたのが分かっていた
作り笑いですら出来なかった自分に驚きつつも、まんざらでは無かった
家に帰った素子は鏡の前で笑ってみた
しかしその顔はとてもぎこちなく、滑稽なものだった
それを見た素子は声を出して笑う
その笑顔こそ本物の笑顔だった
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