2/10
前へ
/26ページ
次へ
午後一時 ランドセルを背負った小学生達がそれぞれ数人のグループを成して下校している そんな中、制服姿の学生が一人紛れていた 彼女は今から学校に向かう所だった 何も授業に遅刻したわけではない 創立記念日で学校は休みとなっていたのだが、部活のために学校を目指していた その部活にしてもほんの数分前に部長からの呼び出しで家を出たばかりだった 「おい!早くしろよ!」 彼女の数メートル前で、一人の少年がランドセルを複数持たされていた   その少年の前を後ろ向きで歩きながら急かす少年が数人   もちろん、その背中にランドセルはない 「ほらほら!早く早く!」 しかしそれは彼女にとってどうでもいいことだった これはジャンケンで決めるような単なる遊びかもしれない そもそもこれが俗に言うイジメだったとしても関わるつもりはなかった 彼女はただただ真っ直ぐ通り過ぎるつもりだった 後ろ向きの少年が彼女にぶつかるまでは 「いでっ!」 少年は振り返り、その女を見上げた 女は少年を見下ろしたまま動かない その眼は明らかに子供に向けるような眼ではない 少年は彼女から目を逸らすようにして離れた
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

123人が本棚に入れています
本棚に追加