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「私も手伝ったほうがいいか?」
「少しだけにするから大丈夫だよ」
ムサシはペンキと刷毛を取り、すぐさま作業に取り掛かった
手伝いたい気持ちも強かったが、何より邪魔になってはいけないと、素子はただ見ていた
時間にして見ればほんの十分ぐらいだろうか
ムサシは作業を中断させた
素子は側に寄る
「もういいのか?」
「今日はこれで終わりにする」
ムサシが色を塗ったのはほんの一部分でしかなかった
「今日はこの辺にして帰るね」
「分かった。片付けは私がするからムサシは家に帰ってゆっくりするんだ」
「ありがとう」
素子とムサシはその場で別れた
ムサシを正門で見送った素子は片付けを始める
片付けが終わると、ムサシが描いた絵を近くで眺める
どれくらい眺めていただろうか
段々と辺りが暗くなってきたのが分かった
「なんだ…もうそんな時間なのか」
素子が腕にしている時計に目をやった
しかし、どう考えても暗くなるには早すぎる時間だった
素子が顔を上げると、いつの間にか太陽は雲に隠れてしまっている
太陽どころではない
空全体を雲が覆い尽くしていた
先ほどまでの青空が嘘のように淀んでいる
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