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雨が降る   予感ではなく、確信に近いものだった   ペンキが乾ききるまでにまだあと一時間はかかる   素子は校舎の下駄箱の方へと走った   するとすぐにポツリと素子の額に冷たいものが当たる   それはやがて頬、腕、脚、身体の様々な場所で認識出来た     下駄箱に着いた素子は近くの傘立てにあったビニール傘を一本取出し、来た道を急いで戻った 天気は徐々に雨と呼べる状態になっていく 絵の前に辿り着いた素子は急いで傘を開く   幸い、まだペンキは流れていない 傘は思いのほか小さかった 素子はその傘を色の塗られた部分にかざす 少しでも濡れないようにと、腕を伸ばし、地面ギリギリに傘を立てる 自身の身体が雨に打たれようとも素子は動かない それが使命であるかのように しばらくすると、雨に打たれる感覚が無くなった しかし雨音は耳に響いている 素子が顔を上げると大山が傘を持って立っていた 大山の持っている傘も小さいため、自分は入り切れず、素子の頭上に掲げているようだった 「何してるの?」 「…暑かったから水浴びでもしようかとな」 「風邪ひくよ」 「部長こそ」 「俺は…その…暑いから水浴びを…」 「バーカ」 雨はその後すぐにあがった とはいえ、二人は酷く濡れてしまっていた
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