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素子は不思議な感覚だった
さっきまで関わる気がなかった問題に立ち入ったばかりでなく、自分の名前まで教えてしまったからだった
あれは単なる気紛れだ
それにもう会うこともないだろう
素子はそう自分に言い聞かせるようにしながら学校へと向かった
素子が部室に着くと既にそこには全員集まっていた
「ん?皆早いんだな」
「そりゃそうさ。今日は九時から集まっているんだから」
「じゃあ何故今ごろになって私を呼ぶ?」
部長である大山は返事の代わりに、ある方向を指差す
その指す先では他の部員三人がダーツをやっていた
「私はやったことないぞ」
「はい、これ」
大山は素子に一冊の本を差し出し、皆がいる方へと向かっていってしまった
素子は渡された本を取り敢えず開いた
「なぁ、大山ぁ。本当なのか?」
「何が?」
「何がって…黒木の話だよ」
上田が疑いの眼差しで素子を見つめる
すると素子は本を閉じ、大山達のいる方へと近付いてきた
「百聞は一見に如かずってやつさ」
大山は素子にダーツの矢を三本渡した
「…で、どこを狙えばいいんだ?」
「取り敢えず真ん中で」
素子は線の引かれた位置に立ち、構えをとった
それはまるで教則本を見ているかのような、まさにお手本の姿勢だった
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