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素子は様々なジャンルの本を読んでいた   小説は勿論のこと、学問書や図鑑、絵本までも手を出していた   そんな素子にオススメの本を尋ねる人も少なくない   しかし決まって素子は「分からない」と返すのだった   この日、素子は一冊の小説を読み終えた   素子が得たものは【読み終えた】という事実だけだった そして家に帰る   寝る   起きる   学校へ行く     素子は学校生活をつまらないと思ったことはない   むしろ楽しんでいる   それでも自分には何か足りない   「…で、素子さんは?」 「…ん?何だ?」 「珍しいな。黒木がボーッとするなんてな」 「夢だよ夢。将来どうしたいかってさ」 「皆、言い終わったよ~」 その日もいつものように皆が自由気ままに過ごす部活だったが、いつの間にか将来の夢についての話になっていた   「夢か……」 素子は本を閉じ、膝の上に置いた 手を顎の下に置き、いかにも考えている様子を見せる 「大体でいいよ、大体で」 「そうは言ってもな……」 「なんだ?今を生きるので精一杯ってか?」 「いや、そういうわけでもないが…うーん…」 素子はしばらく考えこんだ そうこうしているうちに、話はいつの間にか好きな映画の話題になっていた 素子はこの日、膝の上の本を開くことが出来なかった
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