123人が本棚に入れています
本棚に追加
素子は様々なジャンルの本を読んでいた
小説は勿論のこと、学問書や図鑑、絵本までも手を出していた
そんな素子にオススメの本を尋ねる人も少なくない
しかし決まって素子は「分からない」と返すのだった
この日、素子は一冊の小説を読み終えた
素子が得たものは【読み終えた】という事実だけだった
そして家に帰る
寝る
起きる
学校へ行く
素子は学校生活をつまらないと思ったことはない
むしろ楽しんでいる
それでも自分には何か足りない
「…で、素子さんは?」
「…ん?何だ?」
「珍しいな。黒木がボーッとするなんてな」
「夢だよ夢。将来どうしたいかってさ」
「皆、言い終わったよ~」
その日もいつものように皆が自由気ままに過ごす部活だったが、いつの間にか将来の夢についての話になっていた
「夢か……」
素子は本を閉じ、膝の上に置いた
手を顎の下に置き、いかにも考えている様子を見せる
「大体でいいよ、大体で」
「そうは言ってもな……」
「なんだ?今を生きるので精一杯ってか?」
「いや、そういうわけでもないが…うーん…」
素子はしばらく考えこんだ
そうこうしているうちに、話はいつの間にか好きな映画の話題になっていた
素子はこの日、膝の上の本を開くことが出来なかった
最初のコメントを投稿しよう!