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関係ない。 …はずだったのに。 「乗ってけよ」 「いいです」 「なんでだよ」 「歩きたい気分だから」 「そんな気分ねぇよ。遠慮すんなって」 なんでこんな事に? 立ちはだかるのは、今朝見た黒い車。 放課後、帰ろうとするあたしの前にピタッと止まったと思ったら、助手席の窓から出てきた手に掴まれた。 「いいから離してください。灰原さん」 「キョウでいい。つかお前、どうでもいいけど早くしないと人に見られるぜ?」 だからそれはまずいって。 昨日に引き続きこんなところ見られたら、何言われるか。 背後の玄関に人影が見える。 大人しく乗るべき? いや、でも。 迷っていると、後部座席のドアが開いた。 「ほら、後ろのお兄さんが待ちきれねぇってよ」 笑いながら手を離すキョウ先輩の代わりに、後部座席からは熱い視線が送られていた。 「乗って」 掠れた声。 もしかしてまた寝てた? やっぱり拒否権はないらしいあたしがモモ先輩の隣に座ると、車は走り出した。
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