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「ったく、最初から大人しく乗れっつーの。で、モモどうすんだよ?」 「家送ってく」 「だってさ、樹(イツキ)」 運転席の男とミラー越しに目が合う。 黒髪にハッキリした二重の優しそうな瞳、キョウ先輩たちとは違う大人な雰囲気。 送迎をしてるって事は、この人もいわゆる組の人? どう見ても、仕事が出来そうなサラリーマン。 スーツ姿だから? 樹と呼ばれた男は振り返り、申し訳なさそうに微笑んだ。 「どうしても送りたいらしいから家、教えてもらっていい?」 「…はい」 「強引なヤツらでごめんね」 家の場所を簡単に説明する。 あたしは電車通学で、学校からは少し距離があった。 「俺んち近いな」 「キョウも帰る?」 「そうする。あ、コンビニ寄って」 走り出した車内。 どこか変な場所に連れていかれるんじゃないかとか、そういう危険な空気は全くなくて。 伝えた通り、安全運転で家の方向へ進んでいく。 本当に、ただ送ってくれるつもりらしい。
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