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彼らのことを知ったのは、今からちょうど2週間前。 この春から晴れて高校生になったあたしは入学式には出席せず、1人あの場所にいた。 この学校で一番大きな、桜の木の下に。 正門から入って左側。 職員室からも、入学式中の体育館からも隠れられる場所。 あたしがここに来るのは、今回で2度目だった。 別に桜が好きなわけじゃない。 もちろん嫌いでもない。 入学式をサボりたかったわけでもない。 …まぁ、結果的にはサボってる事になるんだけど。 新入生を歓迎するかのように花を開かせる桜。 その太い幹に背を預け、ひらひらと宙を舞う花びらをぼんやりと眺めた。 今頃、他の新入生たちは校長の長い話を聞きながら、期待に胸を膨らませているんだろう。 新しい学校。 新しい出会い。 勉強、部活、友達、恋愛… そういうの、苦手。 あたしには友達と呼べる人はいないし、いなくていいと思ってる。 恋愛だってする気もない。 何も期待なんてしない。 …期待なんて。 だから。 あたしがここにいる理由は。  
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