151人が本棚に入れています
本棚に追加
「モモ」
さぁっと、春の心地良い風が通り過ぎる。
それと共に届いた声に、あたしはハッとして顔を向けた。
金。
ぼんやりとした世界に突如として現れたのは、眩しいくらいに金髪の男。
先輩?
制服の着慣れた感じとか、入学式の最中ってことから考えるときっとそうだろう。
本当ならネクタイの色で学年がわかるんだけど、金髪の首にはそれがない。
「モモ、いるんだろ?」
迷うことなく一直線にこちらに向かってくるその切れ長の瞳は、どうやらあたしの背後を捕らえているらしい。
だってあたしはモモじゃないから。
ちょうど木の反対側。
死角になっている箇所を覗き込むと、金髪は呆れたように大きな溜め息を零した。
「寝てんじゃねぇよ」
勢いよく振り下ろした手が何かに当たり、ペシッと乾いた音が響く。
するとすぐに、明らかに寝起きの掠れた声が返ってきた。
「………寝てねぇよ」
逆ギレ!!!!
最初のコメントを投稿しよう!