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…凝視。 目が合った状態から何故か一歩も動かない茶髪。 逸らすに逸らせず、身動きのとれないあたし。 訳もわからず見つめ合ったまま流れていく時間。 恐ろしく長く感じるけど、実際にはまだ数秒しか経っていないと思う。 なんかもう、ここまできたら逸らしたら負けみたいな雰囲気。 「…お前、1年?」 そんな気まずい空気の中、最初に口を開いたのは2人の様子を観察してた金髪だった。 チャンスとばかりに茶髪から目を逸らしたあたしは、返事の代わりに頷いた。 「初っ端からサボりかよ」 「…」 「先が思いやられんな」 「…」 「友達できねぇぞ」 「…」 「てかお前、ついてる」 ついてるって? え、憑いてる? 自分の左右の肩を確認していると、金髪の手があたしの髪に伸びた。 はらりと落ちる桜の花びら。 もしかして、茶髪がずっと見てた理由ってこれ? 「入学式くらい出ろよ不良」 ていうか、ね。
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