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班に分かれて行う理科の実験だが、葵はほとんど見ているだけだ
下手に手を出すと失敗しかねないからだ
それは前回の実験で班員は身を持って知っている、嫌がる葵に無理矢理お前も働けと実験をさせた結果、取り返しのつかない事になってしまった
とりあえずその場は先生のはからいで収まったものの、後々葵は班員に怒られると同時に謝られた
それが原因でイジメが起きなかっただけせめてもの救いだ、さらに謝られれば儲けものと考えても大袈裟ではない
というか、そんな葵に頼みごとをする先生は馬鹿だ
「椎名さん、次は」
「あぁちょっと待ってぇ……いいよ」
結局葵に与えられた仕事は、ひたすら実験結果を書き取っていく事だ
これがなかなかはかどる
理科の授業はなんだかんだですぐに終わった
皆班ごとにバラバラと片付け、バラバラと教室に帰っていく
葵は先生に見付からないようにコソコソと理科室を出た
なんか悪い事をしているみたいで気が滅いる
10分の休憩を挟み次の3時間目、4時間目を適当にこなすとお昼に入った
「葵ぃぃぃ、一緒に食べない?アンタいつも一人でしょ」
凉香が珍しくお昼を誘ってきた
「えとぉ…ごめんね……今日はお昼…買わなくちゃいけないから」
「………うーん残念。まぁいいや、次は逃がさないから」
「ごめんね」
本当は嘘だ
慣れない相手と一緒には食べたくない、凉香のことではない
その周りにいる人間のことだ
話題がないから取り残されるのが嫌なだけだ、それで弾き出されても困る
葵はそそくさと教室を逃げるそうに出た
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