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葵は屋上に来ていた
この時間、屋上には何故か人が滅多にこないことは調べてある
なるべく人から見られる可能性の低い所を選んでそこにしゃがむと、自作の弁当を広げた
親は忙しいから作ってくれはしない
酷いときは三食全て自分で作るときだってある
そのせいで(おかげで)葵の料理の腕はかなりのものだ、普通のおかずからお菓子まで何でもこいという感じだ
「うん…でも今日は若干焦げてる気がする………」
そんな日もある
そして、ただぼぉっと口にものを運ぶ作業をしていたせいで、屋上の扉が開いたことに全く気がつかなかった
口に箸を運ぼうとした瞬間、その腕を掴まれ後ろに捻られる
突然の事に悲鳴をあげる暇さえなかった
「不味くはないな」
その声にビックリして振り返ろうとするが、頭を鷲掴みにされ無理矢理前を向かされる
「なっ…何の用ですか?」
震える声でやっとそれだけを口にした
「仮は返せって言っただろ」
「何の仮か…分かりま…せ……」
さらに無理矢理上を向かされ、声を出すのも困難になった
「お前が放置した理科の実験の準備だよ」
「あっ…あれっ……先輩が……でも頼んで…なっ」
「人の親切は素直に受け取れ、それとも受け取れないのか?」
当たり前だ、そんな下心丸出しの親切なんて受け取りたくない
前に手が伸びてきた
思わず身を固くする、が箸を奪われただけだ
そのまま無遠慮に弁当をあさられる
「なに期待してんだよ」
「何も…してません」
「ふーん」
結局残った弁当の中身を全て食べられてしまった
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