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『あぁ…お昼ご飯が……』
視界の隅に写る空になった弁当箱を見て、心の中で静かに泣いた
「さて……」
その言葉で自分がまだ捕まったままであることを思い出す
「次の授業まで後まだ30分ある」
不良のくせに授業開始時刻を気にすることを意外に思った
この状況でそんな事を考えていられる葵も十分変人だが
「何をしようか」
「今すぐに…解放される事を望みます」
「無理な相談だ」
言ってみただけだ
無理なのは分かっている
ならばあと葵に出来ることはなるべく時間を稼ぐ事だ
「あのぉ…どうして屋上って……人がこないんですか?」
「怖いお兄さん達の縄張りだからな」
「………………」
聞かなきゃ良かった、てゆか今度から近付かないようにしよう
「あっあの……次の授業の準備が……あるんで……そろそろ」
「移動じゃないだろ。教科書準備すんのに、そんなに時間かかるのか?」
「……………」
何故それを知っているという疑問が頭にわいた、普通なら他学年の時間割りなんて到底分からないはずだ
そんな事を考えていると地面に組敷かれた
慌てて儚い抵抗を試みる
「怪我しても知らないぞ」
「そんなこと…どうでもいいですぅ!」
膝にはった絆創膏が剥がれ、カサブタもついでに剥がれ、患部から再び血が流れ始める
自分で腕を捻って体を捻ると、諫早祐也と正面から対峙する形をとった
「面白くないな」
突然の一言に驚いて顔を上げると同時に解放され、支えを失った葵は頭から後ろに倒れた
悶絶する
気絶しないぶん、ここら辺はかなり図太い
「面白くない」
もう一度言われた
地面に倒れた状態で見上げるが、背中を向けており表情は見えないが、どっちみち逆光だった
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