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今の子供は生意気で教師が可哀想だと誰かが言っていた
でも、その分教師の質だって落ちてると思う
現に今目の前にいるこの男は……
「頼むよ椎名、先生だって忙しいことぐらい分かるだろ?」
だからって生徒に明日に授業の準備を頼むのか
プリントの運搬くらいまでならまだ分かる、でもこの理科教員兼担任は機材の準備まで葵に頼みたいと言っている
準備だって授業をするためには大切なことだ、それを必要以上に生徒に頼むのは職務放棄しているようなものだ
他にも言いたいことは山ほどある、葵だって暇でもなければ、パシリでもない
「先生だって悪いと思ってるよ?でも大事な会議入っちゃってさぁ」
情に訴えかけてくるのが一番困る、葵には一番効果的で、そして手汚い方法だ
「でも…そのぉ……困ります…………どんくさいし」
「大丈夫大丈夫、椎名にも出来るくらい簡単だから。ビーカーを並べて机に置いとくだけでいいからさ」
「えぇ…でもぉ」
葵が頑なに拒むのと同じくらい、担任も食い下がらない
こういう持久戦は苦手だ、どうしてもめんどくさくなって先に折れてしまう
「……分かりました」
いかにも渋々と言った感じで踵を返すと、重い足を引きずるようにして職員室を出た
葵が職員室から出て行ったのを確認すると、担任はまた机に向きなおった
これを終わらせないと家に仕事を運ばなくてはいけないことになる、それはめんどくさい
「近藤先生、椎名さんにまた頼みごとですか?」
近藤が背後を振り返ると同じ学年の他クラス担任である山口が口元に笑みを浮かべながら立っていた
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