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葵の目にはどう見ても、男子生徒が複数の男子生徒に輪姦されているようにしか見えない
しかもその中央に立っている一際異彩を放つ長身の人物の容貌には聞き覚えがある
記憶が間違っていなければ、校内で有名な不良集団のリーダー核『諫早裕也』だ
その記憶の人物が口を開いた
「どっちにしたって口封じは必要だろ」
そうすると机を乗り越えゆっくりとした足取りで、葵に近づいてきた
「あっ…うっ…あっ……」
声にならない声がもれる
本能が逃げろと警告を発している、だが足がすくんで動けない、目に涙が浮かぶ
伸びてくる手、その手が葵の体に触れるか触れないかのところで葵は弾けた
力任せにドアを閉めるとそのまま振り返らずに走りだした
『逃げろ…逃げろ…逃げろ!!』
腕に残るドアを閉めたときの感触、なんか微妙に気持ち悪い
と余計なことを考えていると、階段を踏み外した
そのまま下の踊り場まで転げ落ちる
「はぶぁっ!!」
背中とか腰とか、とりあえず体の後ろ側を全て強打した、膝も擦りむいている
全身が痛んだが気にしている場合じゃない、後ろから追いかけてくる気配から逃げないとあの男子生徒みたいになる
立ち上がって痛みに耐えながらも階段をなるべく早く下りていくが、結局下2階分は下りたというより、落ちたというほうが正しかった……
「はふぅ……はぁ……はぁ……ふぅ……」
なんとか教室にたどり着き、乱れた呼吸を整えると、自分のカバンを手に取り下駄箱に向かった
革靴に履き替えて校門の前をトボトボ通り過ぎると、背後から声をかけられた
ビックリして振り返ると心配そうな目で葵を見る山口が立っていた
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