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「ふっふっふっ、我ながら良く似合っているではないか」 姿見の前で仁王立ちになり、己の制服姿に満足気に頷く少女 他にも違うポーズを決めてみる 「完璧」 「アンタ、アホでしょ」 「うおっ!」 突然背後から声をかけられ、思わず野太い奇声をあげてしまった これは可愛くない 「ノックくらいしてよ!」 背後から音も無く覘いていた既に社会人の姉を睨んだ 「ナルシーなのもいいけど、度が過ぎてキモイ」 「うっさい!」 「それより早く下でご飯食べな、お母さん片付かないって怒ってんよ。それとも、自分の姿に酔いしれてご飯どころじゃないって言っとこっか?」 「行きます、行きますぅ。行けば良いんでしょ」 「早くしな」 束の間の自分の世界を破壊され、さらに恥ずかしい姿まで気分は最悪だ おとなしく部屋を出て食事につくと、早速母親に文句を言われた 一年中朝からブーブー文句を言って疲れないのだろうか 「ごちそうさま」 食べ終わり食事を片付けていると、目の前で新聞を読んでいた父親が顔をあげた 「悠菜。入学式は何時からだ?」 「えぇと、9時半から」 「うーん、ちょっと無理かぁ」 「ちょっとって、あなた今日から出張でしょ?無理に決まってるじゃない」 「だよなぁ………。じゃあビデオよろしく」 「悠菜はそろそろ家出る準備しなさい」 「てゆかもう出る」 部屋に戻り新品の鞄をとると、まだ家すらも出ていないと言うのに緊張してきた 新しき環境、全く知らない環境 中学でかなり勉強して今のところに入った 全てはある目的のためだ 「さて、頑張らなくちゃ」
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