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気合い十分に家を出た悠菜だったが、すぐにそれが空回りするはめになった 「うっわ、でかっ!」 学校校舎を目の前にして、あまりの巨大さに目が白黒してしまった 編入学試験は学校外で行ったため、実際に来るのは今日が初めてだ 「迷子になりそう」 私立紫星ヶ丘学園 近所では有名なそれなりのお育ちのお坊っちゃんやお嬢様が主に通う学校だ 幼稚園から大学までエスカレーターも可能という、かなり現実離れした学校でもある 何故悠菜がここに通うのかと言えば、建前は近いから 元々今の家には父方の祖父母が住んでいたのだが、一年程前に亡くなってしまった 家に住む人がいなくなり放置するわけにもいかなかったので、改築して悠菜一家が住むことになったのだ 元は地主だったらしく、広い家に引っ越せると姉は不謹慎にも秘かに喜んでいたのを知っている そして仕方なく悠菜は地元を離れ、この訳の分からない学校の生徒になるべく猛勉強したのだ そして特待生として入学している 「あぁぁぁぁ、鬱だ、凄く鬱だ。ここの人達常識とか通じんのかなぁ、世界違って会話出来なかったらどうしよう。てゆか、アタシだけ庶民」 残念な気分になった だが、一人だけ庶民と言うのは逆にレアだ! もしかしたら、物好きが友達になってくれるかもしれない 「いやっ、でも物好きって要するに変人。変人と仲良くなってもなぁ、微妙だなぁ……」 「じゃあ、その微妙ついでにそこをどけ。邪魔だ!」 「んぁあ!?」 当然背後から話掛けられたのと、いきなりの暴言につい素で振り返ってしまった 今の自分はかなり人相が悪いだろうと思ったが、背後の人物も負けず劣らず人相が悪かった
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