罪深き行為

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「前から思ってたんだけどさぁ~~お前なにげいい腕時計つけてんなぁ~~」  俺がどうにか言葉を絞りだそうとした瞬間、向って左にいる小太りの男子が、その細い眼を俺の腕時計へと向ける。  「これはダメだ!」    俺はとっさに胸倉をつかんでいる手を振り払い、自分の左手を抱え腕時計を隠す。    「何? それそんな大事なもんなの? ちょっと俺にも見せてくれよ」  茶髪の男子が不適な笑みを浮かべながら俺に言う。これだけは、これだけは絶対に渡すわけにはいかない。  俺は小刻みに首を横に振る。  それを見て、茶髪の男子は深い溜息を一つつき、俺の向って右にいる体格のいい男子に「おい」と声をかけた。  すると、その体格のいい男子は俺の後ろに回り込み、強引に俺をはがいじめにする。  そこですかさず小太りの男子が腕時計へと手を伸ばす。 「やめろ! 頼む! これだけはやめてくれ!!」  俺は必死に抵抗した。しかし、どんなに体を動かそうとしても、ビクともしない。どんなに言葉を発しても、やめてはくれない。  あっけなく奪われてしまった腕時計が、茶髪の男子の手に渡る。そして俺の時計をまじまじと眺めた後、言った。 「これ、返してほしい?」   「頼む……それだけは勘弁してくれ……」  すがるように発した俺の言葉に、意外な返答が返ってきた。 「んじゃ返してやるよ」  そう言うと、茶髪の男子は時計を持っていた手を俺の目の前へとつき出した。  よかった。どうにか時計だけは返してもらえそうだ。  そう安堵した刹那、俺の前に突き出された手は、ゆっくりと天井へと向かっていく。   茶髪の男子は上唇をニヤリとあげた 「ほら……よ!!」
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