罪深き行為

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 勢いよく投げられた銀の腕時計が、ものすごいスピードで地面へと向かっていく。  なぜだろう。目で追えるようなスピードではないのに、時間が経過が異常なまでにゆっくりと感じ、腕時計が地面に向かっていく様子が、俺の目に鮮明に映し出されていて。  そして、ガシャンという音と共に、破片が宙を舞う。 「わりぃ。手がすべっちまった」  ヒビの入った腕時計が、俺の眼の中へ飛び込んできた。  その時。俺の中で何かが崩れ落ちていくのを、確かに感じた。 「う……うあああああああああ!!」  俺は自分でもビックリするぐらいの力を振りしぼり、抱えられた腕を振り払う。そして、壊れてしまった腕時計を、やさしく持ち上げる。    見ると、ガラスの部分は粉々に砕け、長針は折れて、短針はねじ曲がっている。もう、どうしようもない。  ハハ……ハハハハハ。だめだ。もう何もかもどうでもよくなっちゃった。  俺は腕時計を大事に抱え、力なく立ち上がる。そのままフラフラと教室の扉に向かい、廊下に出て行った。  いきなりの俺の行動に、動きが止まっていた3人の男子だったが、茶髪の男子がハッとして俺に向って叫ぶ。 「お……オイ! てめぇどこいくんだよ!!」    あぁ~~俺どこ行くんだろう。自分でもわかんねぇや。うぅ~ん、そうだな。楽になれる場所に行こう。  気が付くと俺は屋上にいた。フェンスを乗り越え、へりに立つ。両手の平に乗せた無残な腕時計を眺めていた。  心地よい風が俺を包む。  ねぇ、父さん、母さん。もういいよね? 俺、がんばったよね? 流石に限界だよ……  俺は壊れてしまった腕時計を抱え、振りかえる。そしてゆっくりと体重を後に向け、空へと身を投げた。  その時、屋上の扉からすごい形相で走ってきた一人の男子生徒が見えた。そいつと眼が合う。 「智久君!!」  遠くの方から俺を呼ぶ声がした。  今更おせぇよ……
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