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えんま? 閻魔ってあの嘘つくと舌を引っこ抜いちまうあの閻魔?
「ん? その顔は信じてないな?」
いつの間にか地面降りていた自称閻魔が、俺に顔を近づけながらそう言った。
「いや……いきなり『私は閻魔だ』って言われて信じる人いないと思うぞ?」
彼女はフッと小さく笑みを浮かべた。
「よし。じゃあ私が閻魔であることを証明しよう」
そう言うと、彼女はおもむろに右手で抱えていた手帳を開いた。
「えぇ~桜井智久13歳、中学二年生。1995年3月16日生まれ魚座のB型。君が3歳の時に父桜井正太郎が交通事故で死亡。それから母桜井春子が1人で君をそだて小学校、中学へと入学させるも、オーバーワークがたたり去年の3月20日に息を引き取る。その後君は母がたの叔父に引き取られるも馬があわず、2か月後にはアパートで一人暮らしを始める。そして……」
「あぁ~わかった! わかったからやめろって!!」
何だコイツ。どうして俺のこと知ってんだよ。
「この手帳にはな、ここに来る者の全てのデータが詰まってるんだ。生きていた時のな」
誇らしげに喋る閻魔に、若干の苛立ちを覚えながらも、俺は黙って話を聞いた。
「そしてこの場所は現世と冥界の狭間だ」
「現世と冥界の狭間? ってことはやっぱり俺は死んだんだな……」
よかった。ちゃんと死ねたんだな。自分に意識があったときはもしかしたら死に損なったかと思ったが、これでやっとあの地獄のような日々とはおさらばか。
「そんなに死んだことがうれしいか?」
「え? どうしてわかった? そんなことまで手帳に書いてあるのか?」
閻魔は俺を指さしながら言った。
「顔に書いてある」
閻魔はフフフと笑いながら、俺に語りかけた。
「だがまだ安心してもらっては困るな」
「どういうことだ?」
まだ安心できない? これからいったい何があるんだ?
「これから審議を行う。君が天国に行けるか地獄落ちるかのな」
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