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……父上が亡くなった時も、七川に行ってたんだよ」
そういえばと思い出せば、大神の死後余り姿を見なかった。
存命時は、よく神殿の中を駆け回り大神とよく歩く姿を見たが、大神の死後から今日までに姿を見たのはこれで二度目。
両手を降ろし、淡く微笑する。
「そうでございましたか」
ゆっくりと、子供が自分に向く。
「それで思ったんだけどさ、お前の瞳って七川みたいっ」
はっと瞠目(どうもく)して子供を見つめる。
「ん?」
「……っ二回目……で、ございますね」
「えっ、そうだっけ?」
うっそーという顔をしている子供にゆっくり頷く。
あれは、今から四百年程前。
大神に子供が造まれ、百年程経ったある日、その子供に廊下でふと声を掛けられたのだ。
――お前の目、あの川みたいだなっ
と、ただそれだけ。
口をポカンと開け、絶句している大神にクスリと笑い、一礼して部屋を出る。
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