【第Ⅰ章】

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 ……父上が亡くなった時も、七川に行ってたんだよ」  そういえばと思い出せば、大神の死後余り姿を見なかった。  存命時は、よく神殿の中を駆け回り大神とよく歩く姿を見たが、大神の死後から今日までに姿を見たのはこれで二度目。  両手を降ろし、淡く微笑する。 「そうでございましたか」  ゆっくりと、子供が自分に向く。 「それで思ったんだけどさ、お前の瞳って七川みたいっ」  はっと瞠目(どうもく)して子供を見つめる。 「ん?」 「……っ二回目……で、ございますね」 「えっ、そうだっけ?」  うっそーという顔をしている子供にゆっくり頷く。  あれは、今から四百年程前。  大神に子供が造まれ、百年程経ったある日、その子供に廊下でふと声を掛けられたのだ。  ――お前の目、あの川みたいだなっ と、ただそれだけ。  口をポカンと開け、絶句している大神にクスリと笑い、一礼して部屋を出る。
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