【第Ⅰ章】

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 部屋を出ると、生神が前を通り掛かった。  神の中で女性は二人。一人が守神で、もう一人がこの生神だ。  月のような薄い金色をした髪を少し高い位置で結い、ぱっちりとした目は自分より少し濃い色をした碧。  儚げな神。と、下界の者は言うが、先代の大神いわく『おてんば娘』 「あ、もう終わったの?」 「えぇ」  並んでゆっくり歩き、さっき子供とした話を生神にする。  二人はとても仲が良いが、生神はとてつもなく忙しいので、話しをする暇がない。  それに比べ、守神はこれといって仕事がない。  理由は二つ。  一つは本当に仕事がない。  もう一つは、守神は病弱で仕事がない理由も大抵これにあたる。  いつも一人で寂しい思いをしている守神の為、生神は手早く仕事を片付ける。  仕事の時は近くに控え、暇な時はたくさん話し、病で床についている時も、やはり静かに傍にいる。
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