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[カポ――――――ンッ]
いやはや…こんなボロボロな
既に廃墟と化した街にこんないい風呂場が残っていようとは……。
那夜はゆったりと、広い湯船に肩までつかり、空を見上げた。
葵が無断で入って行った屋敷は、
さすが豪邸。と、言えるだけの広さと設備があった。
とはいえ、戦いの真っ只中に位置していたため、その殆んどは無惨にも崩れていた。
風呂を探すのに歩き回った時に目にした、
元は美しかったであろう様々な骨董品や絵画は見るも無惨な姿となっていたし、
部屋だって、いくつもいくつも、
綺麗な部屋を数えたほうが早いのではないかというほど、荒れ果て壊れていた。
そんな中で、風呂場が残っていたことは、奇跡に近かった。
天井は崩れ落ち、壁はないに等しかったが、
上手く瓦礫が避けたのか、
湯船の方には被害は殆んどなく、天井に空いた穴も、露天風呂のようで全く気にならなかった。
逆に、天井がなくなったことで夜空を楽しむ事ができ、
崩れたほうが良かったな、これは。と、那夜は心の中で思った。
(あぁ…これで“銀の月”だったならな…)
那夜は赤い月を見上げた。
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