†opening†

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夕闇迫る森の中に、 唄を奏でる少女が一人。 「――昔 むかし 天国(アマクニ)に 一人の天使が おりました 揺れる ゆれる 黒き髪 輝く瞳の 美しきこと――」 高い、子供独特のソプラノに合わせて クルクルと。 不規則なステップで楽しそうに踊る少女。 夕陽に照らされながら、唄い、舞う姿は、 子供とは思えないほど美しかった。 「――昔 むかし 地上(チノウエ)に 一人の 男が おりました 光る ひかる 白い羽 男は 天使と 出会いました―― ――二人 出会い 恋に落ち 神は それを 見てました 怒り……」 急に歌うのと踊るのを ピタリと止めた少女。 その視線は木々の奥にいる人物をとらえる。 「…何やってるの? 兄さん。」 少女の問う声に、人物は前へと進み出る。 穏やかな笑みを浮かべたまま、青年は少女の目の前までやってきた。 「迎えに来たんだよ。 5時を過ぎたのに帰って来ないもんだからな。」 そう言って、風になびく少女の髪をクシャッと撫でた。 だったら早く言えば良かったのに、と 少女は眉を寄せ、 髪を直しながらそっぽを向いた。     _
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