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そんな少女に苦笑いしつつも
やはり穏やかな顔で少女の右手をそっと握った。
少女は特に嫌そうな顔をするわけでもなく、ちらりと兄の顔を見たあと
視線を美しく沈んでいく夕陽へと向けた。
ふと、青年は先ほどまで少女が歌っていた唄を思い出し、夕陽に目をそそいでいる妹に話しかけた。
「そういえば…さっきの唄は何ていう唄なんだ?」
澄んだ歌声を思い浮かべる。
少女は視線はそのままに、兄の問いに答える。
「……―《悲劇》―って…いうんだよ。」
―《悲劇》―…
予想外な題にキョトンとしてしまう青年。
「…そんな唄には聞こえなかったけどな…ι」
「一番と二番はね。」
兄の反応にフフっと笑みを浮かべながら続ける。
「三番が哀しいんだよ。
…アレはね?天使の女の子と人間の男の子の恋の話しなの。」
夕陽をその目に映しながら、
どこか違う、ずっと遠くを見つめている少女に、ふーん、と相づちを打つと同じように夕陽を見た。
「…続き。聴かせろよ。」
「やだ。」
∑ガーン!ι
思わぬ即答にショックを受ける兄。
しかも同時に手も振りほどかれたため、
心のダメージは二倍となった。
そんな兄をしりめに、少女はクルリと一回転して背を向けた。
そして、ニコリ。よりもニヤリ。と効果音が付きそうな笑みを浮かべると、
肩越しに一言。
「…また今度ね。」
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