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「……お前さ。」
「ん~?」
葵の怪訝そうな視線が飛んでくる。
「よく…んな所でくつろげるな…。」
(…あぁ…。)
那夜はふっと自嘲じみた笑みを浮かべると、心の中で呟いた。
今日は…なんて赤い夜なのだろう……
照らす月も“赤”。
照らされる街も“朱”。
冷たい地面に転がる、先程壊した機械達も―――――“紅”。
全てが“血(アカ)”に染まった、“赤”の世界。
そんな世界の中心で悠々としている私は、なんて“異質”なんだろう。
「慣れって怖いよね、葵。」
気持ちの悪い程に赤い世界で、
壊れた機械の屍の上に寝そべって、
ただただ、呆然と月を見上げる。
「慣れちゃったよ…。」
この深い“赤”に
染み込むような“闇”に
慣れてしまった。
ふと、目を閉じる。
闇が広がる。
《君には“アカ”がよく似合う……。》
そう言ったのは…
(誰だったかな?)
「お前は“赤”がよく似合うな。」
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