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「え、えーと、ちょっと落ち着こう。な?」
一方の柳も、口元をひくつかせながらも笑んだ顔で利菜を宥める。
「十秒」
それだけ言って、利菜は柳の胸倉から手を離した。
十秒で思い出せ、ということなのだろう。柳は必死に記憶を遡る。
(約束約束約束約束約束約束約束約束……!)
頭の中を、利菜が言った「約束」という言葉が駆け巡る。
(隣の牢屋にいたのに、今日わざわざこのタイミングで言うということは、会ってから話すって約束だったはずだ。それで俺が忘れちまうってことは大したことない話で。けど利菜が怒ってるってことは相手には重要な話で……!)
もしや。
自分にとって覚えてる必要がないくらい、当然な話?
だとすれば、可能性は――。
「はい、アウトー」
「うぼぁー!?」
答えに行き着く直前、利菜のボディブローが炸裂した。
座ったままなのに、なんという威力だ。柳は殴られたところを押さえて悶絶する。
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