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「そういえばさ」
「あん?」
カチャ、と食器を置く音。どうやら食べ終わったらしい。
「そのうち顔合わせできるって言ってたけど、いつになるのよ」
不満そうな声。確かに半月も焦らされれば、そうなるのも道理だ。
「……あー、あれかぁ」
「もう結構経つんだけど。そこらへん、どうなの?」
「…………」
問われた柳は気まずそうに、壁のせいで見えないはずの利菜から目を逸らすようにして黙り込む。
「どしたの?」
「あ、うん。えっと、な……?」
「うん?」
「計算すると、あと三週間ちょい……」
僅かな沈黙。
「…………マジ?」
「大マジっす」
◆
「あー、と。説明……してくれるわよね?」
「いや、大したことじゃないんだが……」
柳の説明によると、こういうことだった。
ここに収容された虫憑きに装着させられたセイフティネックは、一定の期間ごとに定期点検が行われる。
監禁されているが故にすることが無い柳は、暇潰しの一つとして、それを数えていた。
利菜と柳の点検間隔で計算すると、それくらいの時間がかかるということだった。
「じゃあ、その日に会えるわけね」
「ああ、俺に惚れるなよ?」
「……調子乗んな三週間がそのうちってどういう感性してんだお前は」
「すみませんでしたーっ!!」
凄む利菜、見えないのに土下座する柳。
しかし、それさえも軽口で――。
「「アッハッハッハッハ」」
――すぐに、互いの牢に笑い声が響き渡った。
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