第一章

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「え、えーと、ちょっと落ち着こう。な?」      一方の柳も、口元をひくつかせながらも笑んだ顔で利菜を宥める。     「十秒」    それだけ言って、利菜は柳の胸倉から手を離した。  十秒で思い出せ、ということなのだろう。柳は必死に記憶を遡る。     (約束約束約束約束約束約束約束約束……!)      頭の中を、利菜が言った「約束」という言葉が駆け巡る。       (隣の牢屋にいたのに、今日わざわざこのタイミングで言うということは、会ってから話すって約束だったはずだ。それで俺が忘れちまうってことは大したことない話で。けど利菜が怒ってるってことは相手には重要な話で……!)      もしや。    自分にとって覚えてる必要がないくらい、当然な話?      だとすれば、可能性は――。         「はい、アウトー」     「うぼぁー!?」        答えに行き着く直前、利菜のボディブローが炸裂した。  座ったままなのに、なんという威力だ。柳は殴られたところを押さえて悶絶する。
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