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だんだん結城の顔が険しくなっていく。はたからみても理解できてないのは容易にわかる。
呆れた叶が口を開く。
『簡単に言えば死ぬ人じゃなくて、死にむかっている人が見えるんだよ。今までに見た人はみんな誰かもわからない人だったから不便には思わないけどさ。』
ここまで簡単に言っても理解できていない。
説明している自分が惨めに思えてきた。
諦めた叶は、そこで話を打ち切って勉強を促した。
悩み顔だった結城も『そうだね。』などと言い、苦笑いしながらノートを開いた。
そこからは、二人とも一心不乱に勉強に打ち込んだ。
日が暮れて、月が高くなった頃。叶はノートを閉じて家へ帰ることにした。
叶を玄関まで見送った結城は、手をふりながら『また明日ね』といった。
叶は自転車にまたがり、こぎはじめた。
その頃、綺麗な満月にどす黒い雨雲が差していた。
生温い風が吹いた。
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