序章―ハジマリ―

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「嘘だ…」 無意識状態に陥っているかもしれない。 「嘘だ…嘘だ…」 現在を受け止めたく無かった。 「嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だぁぁぁ!」 慎は泣き叫ぶ。無論、他の周りも同様に。慎は壊れたレコードのように、リピートボタンを押されたように何度も何度も同じ言葉を繰り返していた。 「おい医者ァ!人助けんのが仕事だろうが!何テメェは黙って見てんだよ!」 「慎…止めろって!」 医者に殴りかかろうとした時、満に後ろから止められる。感情が爆発し、思いっきり満を振り払おうとする慎を、今度は灯が前から止めた。 「アキラぁ!…目ェ覚ませよ!寝てんじゃネェよ!…また…バカやろうぜ…目を…さま…してくれ…よ…」 もう届かない言葉をかけ続ける。力無く満の体に倒れ込みながら。アキラに近付き、手を強く、確りと握りながら。 後に続き他のクラスメイト達が病院に到着した。先生達も遅れて入って来た。 皆泣いている。いや、泣かない人などいるものか。皆に慕われていた奴が、その存在がこの世から消えたのだから。もう、二度と戻ってはきやしないのだから。 「…すみませんが…そろそろ退室して貰えませんか…?まだやらねばならない…事が…。ご家族の方々は御残りください」 医師が後ろから近付き、気まずそうに呟いた。慎は医師を睨み付けたが、すぐに立ち上がり、退室しようとする。しかし足がうまく動かなかった。満は察したのだろう。言葉をかけずに慎を支えた。 「すいません…した」 「はい…わかりました。大丈夫か、慎?」 満と慎は了解し、満は慎の肩を持ち上げ、退室する。慎は抵抗せずに連れていかれた。満も、灯も、クラスメイトも、先生達も泣きながら、静かに部屋を出ていった。
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