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その後、医者や、現場にいた人達から事件の事、つまりアキラが死ぬ間際の事を聞いた。
オーディオを聴きながら帰っていたアキラは、信号に気付かず出てしまい、トラックにひかれたという。それは誰が見ても即死。
とても悲惨な光景だったらしく、トラックもスピードを結構だしていたので血が周りに飛び散り、片手が飛んだりもしたらしい。友達の姿で想像をしたくないものだ。全身を見なくてよかった、と感じてしまう。
その後、慎は満と灯と3人で帰るように言われた。
慎は心にずっと引っ掛かっていた事があった。自分がファーストフード店で見たのはアキラでは無いのだろうか?他人のそら似という可能性もあるが、そんなに身近にいるだろうか?考え付く先は必ず見間違い、という結果に辿り着いてしまう。
悩みながら、混乱したまま帰る。自分がおかしくなったのか。
「なんでアキラが死ななきゃなんねぇ―んだよ…!こんなはやくくたばるなんてアイツらしくねぇよ…!!きっと…なにかっ…!」
満が声を震わせながら言う。それは怒りなのか、悲しみなのかは誰にも、満自身にも分からなかった。
「もう聞きたくないよ!やめてよ!そんなこと分かってるよ!で…でもっ…!」
灯が泣きながらも事実を受け入れようとする。しかし、完全には受け入れることは出来ない様だ。頭で理解していても、心が否定する。まさにこの事だろう。勿論の事、慎も同じだった。
「じゃあ…オレこっちだからよ…また…明日な」
慎の暗さはアキラが死んだ悲哀から来るものでは無かった。いまだに現実を疑っている。自分が見た、幻?いや、幻にしては都合が良すぎる。生き霊という奴か、死ぬ前兆という奴か?
2人はこくりと頷き、泣きながら手を振った。慎はそこで2人と別れた。
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