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学校の放課後。
いつもの日常。
何も変わらない。
朝起きて、学校行って、帰って寝るだけ。それの繰り返しが続くだけだった。違うのは今、初夏の日差しが少し眩しく、いつもより暑いくらいだ。
高校二年の夏。
銀の短髪を持つ青年、神野 慎(かみの しん)はいつもの日常に退屈を感じていた時だ。
何より、普通が嫌いで、繰り返す日常に意味を感じなくて。学生らしく青春も感じてなくて。部活も入っていなきゃ恋もしていない。勉強もそこまで出来る訳じゃない。
漫画の世界は退屈が無くて憧れる。この世界から脱け出したくて。いつか誰かが手を差し伸べてくれるんじゃないか、とか思ったりして。
「面白い事…ねぇかなぁ…」
深く溜め息をつきながら項垂れる。それは誰でも思っている事では無いだろうか?来ないと分かっている理想に、僅かな希望を抱く。それが人間だろう?
「あったら大歓迎だねぇ」
不意にかけられた声に体が強張る。隣にいる友達の姿が視界に入ると、慎は安堵の息をついて返答した。
「お前かよ…アキラ…」
さらに溜め息。期待外れもいいところだ。慎は机に寝そべり、退屈、そして呆れた目でアキラを見た。
「オレで悪かったなぁ…」
悔しそうに皮肉を込めながら言っているのが分かるよ。ほら、その証拠に眉がピクピクしている。慎は不機嫌そうにわざと目を反らした。
「悪ぃなんて言ってねぇっつの」
慎に話しかけてきたのは中原 彰(なかはら あきら)チャームポイントは赤毛、言うなれば慎の悪友だ。そしてたまにフリがウザい。まぁ、クラスの中心的存在だろう。勿論バカな意味でだ。
「ナァ~今日どっか帰りよらん?」
「よらん」
アキラの顔さえ見ずに即答。もう何もする気が起きない。アキラはがっかりし、冷たい目で慎を見た。慎は無視するかの様にそっぽを向く。
「この頃付き合いわるぃなぁ。なんかあったか?」
ある筈がない。この退屈ないつも通り日常で。あったら大歓迎だ。もしあれば神様は信じてないが、存在くらいなら信じるようになるかもな。
「…あってもお前じゃ何もできねぇっての。去れ去れ、目障り以外のなんでもねぇ」
手をヒラヒラさせ冷たく言い放った。これは毎度の冗談で本心じゃない。今日は少し本心混じっているが。
アキラは慎にあっかんべをしながら、むすっとしながら言葉を続けた。
「じゃあオレは1人でゲーセンいきますよ~だ!もう頼んでもダメだからな!」
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