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「オレは1人でゲーセンいきますよ~だ!」
友達は慎以外いないのか?どうしても来て欲しいらしくアキラは何度も同じセリフ10回以上は言っている。慎は面倒と言うより、行く気が起きなかった。
「さっさと行ってくれ。今日は気分が乗らないから行かねぇの」
慎はそっぽを向く。理由は無かった。ただ顔を合わせたらいけない気がした。何となく、気まずいような。
「ありゃ?そっか。なんだ今日授業昼で終るからいいと思ったのによ~…じゃあな」
「ぁあ…またな」
アキラは残念そうな顔をしながら帰る。慎は暫く何もせずにぼーっとしていた。何かないか?起きないか?変わらない日常に何か期待をしていたのだ。
数分後、我に帰った様に慎は体を強張らせた。どうやら寝てしまったよう。幸い少ししか時間は経っていない。
「オレもそろそろ帰るかな…あ~くそ。こんなことだったらアキラとゲーセンいきゃ良かったかな…」
予定も無い日常。慎は後悔しながら鞄を手に取り、席を立ち上がった。教室の中を見渡すが何も変わりようが無かった。慎は溜め息をついて少しだけ速足で教室を出ていった。
帰りに商店街に寄る。相変わらず田舎にしては人が多い。特に用があって来た訳じゃない。人がいるところに問題あり。何か変わったことがないか少し期待をして寄道しただけだ。
ぐぅ~…
慎の中に住み着く腹の虫が音をあげる。学校が早く終わり、昼を食べていないからだろう。慎はそんな事も忘れていた。それより周りに変化が欲しい。そういった欲望の方が強かったから。
「なんか食ってくか…」
そう思い近くのファーストフードの店に入り、窓側の席に座る。メニュー越しに外が少しだけ見えた。
「あん?」
ふと窓の外をみた時だ。見たことのある姿が慎の目に飛び込んで来た。
「アキラ…?アイツん家、逆方向じゃなかったっけか?ほんとに1人でゲーセンかよ…」
アキラは止まらず、速足で歩いていく。いつもとは雰囲気が違う。普通が明るいアキラに比べ、我を失ったかの様に歩いていた。
「どこ見て歩いてんだアイツ…ぶつかるぞ」
明らか様子がおかしい。慎は無意識にアキラの姿をじっと目で追っていた。
それが『何か』とは知らずに。
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