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様子がおかしい。何と説明しようか。目が虚ろで瞳が無いように見える。まるで死んでいるかのように。
ガラの悪い連中が商店街の真ん中を広がり歩いて来た。このまま行けば勿論、アキラの前にも歩いてくるだろう。商店街にいた人々は横に避けていく。しかしアキラは避ける様子も無く、ただ直進し続けた。このままではぶつかり、面倒事になる。
ぶつかる、と慎は思い心配そうに見ていた。いざとなれば出て行くつもりだったのだが、その必要は全く無かった。なぜなら、いつの間にか雰囲気の悪い連中とアキラの位置が入れ替わっているようにお互い気にせず歩いていたのだ。
「…ありゃ…今?」
慎は呆気をとられた様に口をあけていた。アキラがマジックでも使ったのだろうか、すり抜けたように見えた。いや、雰囲気の悪い連中も、アキラもお互いが見えていない様だった。
「あの~お客様?」
「はっ…はい!」
ウェイトレスは慎に声をかける。当然と言えば当然。ペンと紙を持っていたので何の事か直ぐに気付いた。
「あ~…んじゃハンバーガー3つで…」
「かしこまりました」
ウェイトレスが店の奥へと駆けていく。
果たしてアキラに何が起きたのだろう。先程までバカやっていたのに、1人、自分が幻を見たのかと疑う。頭を抱え、溜め息。
疲れが溜まっているのだろうか?何度も思い出しながらも自分に言い聞かせる。目の前で起きた事が理解どころか、うまくまとめる事さえ出来ない。
考えていると深みに足をはめる。そんな事を思っていると先程のウェイトレスが戻って来た。手には勿論、料理を。流石ファーストフード店。
「お待たせしました~」
「あ…はい」
慎はアキラの事で頭がいっぱいになり、混乱した。ぶすっとしながら分からない悩みをぶつけるようにハンバーガーにがぶりついた。
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