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慎は病院に向かって夢中で走る。
息をきらしながら、周り何だと言われんばかりに見られながらも。周りの視線など、何が起きていようと今はどうでもいい。人はそういうものだろう?
「ちきしょうっ…!」
信じられる訳が無い。見たくもない現実を見に行こうとしている自分。辛ければ行かなければいいのに。勝手な事を思いながらも市街を駆け抜ける。汗と一緒に涙が止めどなく零れていた。
「慎くん!」
「しぃん!こっちだこっち!」
病院の前でオレを呼ぶ2人。背の大きい黒短髪の少年、高円寺 満(こうえんじ みつる)と長い茶髪の少女、佐藤 灯(さとう あかり)。
2人とも慎とアキラの幼馴染み。2人が泣きながら慎の名前を叫ぶ。
「みつ…る…あかり…」
息をきらしながら2人の名前を呼んだ。
「アキラは…?」
2人とも沈黙し、泣きながら病院の中にはいった。少しだけ待つと、看護師にある一室に連れて行かれる。
「慎…君…。こっちだ…」
部屋の中にいたアキラの父親に呼ばれた時、目には信じられない、いや信じたくない光景が写る。
慎は鞄を肩から力なく落とした。立ち尽くし、言葉も発せなかった。魚のように口をパクパクさせ、再び目は虚ろになり、体が小刻みに奮えていた。前にはアキラの家族。横になり、白い布を顔に被せ、肌が青白く、冷たくなったアキラの姿があった。
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