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彼は黙って笑っていた。
「あっ、ごめんなさい。失礼なこと言って。」
陽菜は聞いてはいけない事聞いてしまったような気がした。
「いや…。いいんだ。」
彼は慌てたように弁解していた。
そんな姿を見ていると陽菜は笑えてきた。
つられて彼も笑い出した。
陽菜は不思議で仕方なかった。
彼とは初めて会うのに、人見知りの私は素直に話もできる。
泣いたり、笑ったり。
初めてのようではなかった。
「…本当に似てるんだ。」
彼は少し真剣な顔になっていた。
「顔はもちろん、声も、泣いたり、笑ったり…。もう全てが。」
陽菜は驚いた。
「…さくらに。」
“さくら”
という言葉を発したときの彼の顔は寂しそうだった。
「君がさっき言ったように、彼女だったんだ…。」
「だった?」
私は過去形が気になった。
「3年前に死んだんだ。」
陽菜は言葉が出なかった。
彼は壊れてしまいそうな顔をしていた。
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