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「その時に私の事言ってくれたら良かったのにぃ!!」
誰もいなくなった講堂でユカは藤堂の真似をしていた。
「やめてぇ。恥ずかしいよ!!」
ユカの一人演技は結構上手かった。
「陽菜が席に戻るまでずっと見てたよ、あの人。」
ユカの口調は意味深だった。
「これ、あれだ…!!」
壇上から降りたユカは陽菜の耳元でささやいた。
「一目惚れ?!」
陽菜はまさかと思った。
自分に可愛さなんてナイし、ましてや一目惚れされる魅力もナイ。
陽菜はそう思っていた。
「それしかないじゃん。花渡したダケでフリーズしちゃうなんて、一目惚れでしょ!!」
やけに説得力があった。
なにせ、ユカの恋愛はほぼ一目惚れから始まる。
「こんなことなら、私が花束渡しに行けば良かったぁ!!」
「ちょっと、他人事みたいに言わないでよね。」
ユカは落ちていたパンフレットを拾い、藤堂真治の顔を弾いた。
「まぁ訳分かんなかったケド、陽菜には久しぶりのドキドキが味わえて良かったんじゃない?!」
ユカはパンフレットを丸めて口に当てた。
「忘れなさぁ~い!!
一瞬の一目惚れは一瞬で終わるから。ドキドキしても無駄ぁ。私、経験済み!!」
「いや、…私は別にドキドキなんてないし。」
結局、“忘れろ”と言うユカの結論で、二人は放課後の教室に戻った。
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