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“白い車”
正門の前に車が停まっているのが大地には分かった。
よく見ると、車の脇に人が立っている事に気が付いた。
「あいつ、さっきの…。」
陽菜の横に並び、陽菜に聞こえる声で言った。
藤堂真治は車にもたれて出てくる誰かを待っている様子だった。
「お前を待ってたりして!!」
大地もまさかと思い、冗談のように言った。
「まさかぁ~。」
陽菜は少し緊張しながら正門に向かって歩き続けた。
ゆっくり歩いても藤堂真治までの距離は知れている。
あっという間に目の前に彼が立っていた。
陽菜は軽く会釈をして通り過ぎた。
後ろから大地も番犬が飼い主の真似をするように、顎を少し動かし会釈した。
二人は変な緊張から解放されたように、ホッとため息が出た。
しかし、そのため息はまだ早すぎた。
「あの、ちょっと良いかな。」
陽菜と大地は“まさか~”と内心思いながら振り返った。
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